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Vol.04尊敬を持って真似る。それはやがて本物へ

第4回は広告会社に勤務されながら、南三陸町の復興支援団体LOOM NIPPONのPRアドバイザーを務める竹内好文氏。
真似ることから始まる本物への道・・・それは、決して表面的なことではない奥深い話でした。

2019/03/30
Vol.04 尊敬を持って真似る。それはやがて本物へ

経験し学び、そして、人として成長すること

今回お話を伺ったのは、3回目のゲストの髙田氏からご紹介いただいた竹内好文氏。
竹内氏は、広告会社に勤めるかたわら、南三陸町の復興支援を手伝うLOOM NIPPONのPRアドバイザーを務めていらっしゃる方。
そんな広告業界の第一線でご活躍され、様々な活動を並行して行う竹内氏に本物とは一体何かを伺いました。

誰かの真似からでもいい

竹内氏には、今回のインタビュー以前から髙田氏の紹介で何度かお会いしたことがあるのですが、インスタグラムで拝見するその着こなしは、渋く洗練されている印象でした。
そこで、今回はまずは、どのような経緯で今のスタイルになったのか。そのルーツについて伺ってみました。
「社会人になってからはアルマーニをよく着てました。その後、クラシックスタイルが好きになったきっかけは、2003年頃のLEONとDORSOです。そのLEONとDORSOで特集されていたのがフランコ・ミヌッチ氏で、そのどこか控えめな独自のスタイルを見て、とても素敵だなと思いました。この領域に入ると、オシャレという概念を通り越していて、素敵という感覚。ミヌッチ氏を真似て、同じような着こなしがしたいと思ったのが始まりです。」とのこと。
お話を伺うまでは、竹内氏にも独自のスタイルとファッション遍歴があり、それを経て今のスタイルを貫いていると想像しておりましたが、真似するというところがスタートになっているということは、意外な部分でした。
しかし、振り返ってみると、ファッションも含め何かを始めるときは、誰かの真似をするところから始めることがほとんどで、その上で、ただの真似で終わるか、自分のスタイルになるかには大きな違いがあると、私は思いました。

「2008年、タイユアタイ青山店オープンで来日したミヌッチ氏に『あなたと同じネイビージャケットを』とお願いしました。生地はドーメル、仕立てはセミナーラ。ROTAのベルトレス・グレーフランネル。独特の襟型が特徴のボタンダウンシャツも贖いました。」
確かに同じスタイルでオーダーされているので、いわゆるミヌッチスタイルなのですが、ただそれだけではない竹内氏らしさが出ているように思います。それは、表面的にミヌッチ氏を真似しただけではなく、違う何かがあるのではないかと感じました。

真似にもオリジナリティが生まれる

たとえば、ものまねタレントも究極までつきつめると、独特のオリジナリティがでてくるように、コピーし続けると自分らしいオリジナリティがでてくるもの。
それについて、竹内氏は、「徹底的なミヌッチマニアです。スーツスタイル・カジュアルスタイル、フレグランスから時計に至るまで。まだ偽物ですけどね(笑)けど、コピーしているうちに自分のアイデンティティが理想に近づいてきたかな。」
真似をするのも徹底してする。続けることで、いつか自分自身というアイデンティティが、真似をする対象のそれに近づいていく。
大切なのは、自分の「アイデンティティ」をつくることなのです。

真似にもオリジナリティが生まれる

印象は人が感じるもの

竹内氏含め、インタビューをしたいずれの方も異口同音におっしゃる「自分自身がある=アイデンティティがある」ことの大切さ。
そこで私が気になったのは、何を意識して自分自身を表現されていらっしゃるか、何がご自身の軸になっているのかという点でした。
それに対して「ミヌッチ氏も、その継承者の加賀氏も渋い印象ですよね。その軸にあるのは、頑張りすぎない、控えめな装いなのかなと思うのです。 ミヌッチ氏がネクタイの小剣をわざと長くしているのは、実はビシッと決めているのに、隙を作っているのだと思います。お洒落に一生懸命だって思われるのは、カッコ悪いと。だから、自分の装いの軸は、控えめで抜けた感じをどう出せるかかなと思っています。」
今日は誰に会うから・ここに行くから・・・かっこよく見せたい・オシャレに見られたいという気持ちはどうしてもできてしまうもの。
その気持ちを無理に抑えるのではなく、そもそもの考え方が違う。控え目か華やかかではなく、中身の問題であるということ。
やはりオシャレをすること、センスを磨くこと以上に、大切なのは自分自身の中身を磨くことなのだと思います。

控えめな装いが軸だとおっしゃる竹内氏。では、その控えめという判断については、どのようにお考えなのでしょうか?

アメカジも取り入れて自分のスタイルへ

「控え目だと思う基準は、その人の趣味も関わってくる。だから、人によって違うと思う。例えば、私の場合、ソラーロのスーツのように若干華やかさがあると、白シャツと黒いニットタイをあわせたくなる。」
他の人がどのように捉えるかは変えられないし、分からない。
そこに焦点を当ててコーディネートするのではなく、ご自身の考えや好きなものをベースに、控え目にという軸をブラさずコーディネートを考える。ごく当たり前に聞こえますが、つい外的要因でそこがブレてしまうこともあるのは、私だけではないと思います。

アメカジも取り入れて自分のスタイルへ

さらに言うと、ブレないというのはその軸を少しも変えないということではなく、竹内氏が「最近、クラシックスタイルにどこかにアメカジのテイストを混ぜたいなと思い始めました。もともとアメカジが好きですし、アナトミカのピエール氏がとても素敵だったので。」とおっしゃるように、
自分自身のフィルターで様々なものを取り入れ、自分のスタイルへと昇華していくことも大切。
それがこそがファッションを楽しむことであり、本物の魅力的な大人になる道ではないかと思います。

支援をするなんておこがましい

クラシックスタイルだけにとどまらず、アメカジスタイルも取り入れていく。
それは、広告会社でのクリエイティブな仕事にとどまらず、三陸町の復興支援を手伝う団体LOOM NIPPONのPRアドバイザーもお務めになっているというところにも現れているのではないかと思います。
「LOOM NIPPONのPRアドバイザーは、Dormeuil Japon / ドーメル・ジャポン株式会社の加賀美由加里会長とのご縁で務める事になりました。加賀美会長は、よく支援というよりも、むしろ教えていただいてると言うか、そういう機会をいただいているんだっていうことをおっしゃるんです。実際私もそう思います。震災後、頑張っていらっしゃる人たちの姿を見て、こちらが元気をもらう。今も苦しい思いをしてらっしゃる人もいらっしゃいますので、何か少しでもお手伝いができればと思っています。」とのこと。
竹内氏本人は、「何もできていませんが・・・」と謙遜されていますが、実際に様々な活動を行っていらっしゃいます。
何事も結局行動することが大切であることは分かっているものの、それができる人は少ないのが現実です。
それを実際に行動し続けている竹内氏の話を伺い、本物と呼べる大人の内面、その本質が分かってきたように思います。

LOOM NIPPONでは、南三陸町の方々と共に、震災の年に生まれた子供達が成人する20年後迄に3000本の桜を植え、町を桜の名所とする活動KIBOU311を行っています。
また、LOOMのサポーターであるドーメルが植樹祭で関係者に提供しているネクタイは、鮮やかなサクラ柄のプリントが施されてたとても素敵なネクタイです。

行動することで価値のある変化が生まれる

「植樹以外にもバッグ作りの支援なども行っていて、そのバッグを作っているアストロ・テック社は電子部品の会社なんです。社長の佐藤秋夫氏の夢は南三陸にファッション産業を作ること。私ができることは少ないかもしれないけれど、この夢を実現する仕事に関わらせていただけたらと思っています。」
つまり、行動をすることで、価値のある変化が生まれる。逆に言うと内面を変える、そんな言葉よりも何かしらの行動を取ることで、結果的に自分の内面や考え方が変わってくるのだと強く感じます。竹内氏の話を聞いて得た<装いながら、社会的責任を果たす行動ができるのも本物の大人>という気付きをもとに、JACKTSTYLEでも、今後そのような取り組みを行ければと思っております。

行動することで価値のある変化が生まれる

尊敬を持って真似る。それはやがて本物へ

真似をすることから始めたとしても、ご自身の考えや好きなものをベースに、控え目という軸をブラさずにコーディネートを考える。
内面は大切だが、それ以上に行動することの大切さを教えていただいた今回のインタビュー。そんな竹内氏に改めて、本物とは何かを伺いました。
「初めは真似をすることから始まりましたが、私の場合、真似をするときには、必ずその人に対してのリスペクトがある。また、どんなに高価な服を着ても中身がないのであれば、偽物のまま。そのリスペクトがあるからこそ感じるギャップを受け止めて、外見だけではなく、自分自身の人間的な内面も成長させ、理想に近づいていこうとするということ、それが本物になれる道だと思います。」
ただ単純に見た目を真似をするのではなく、その見た目と同様、もしくはそれ以上の内面になるようにする。
その根底にあるのは、上辺だけの真似ではなく、尊敬を持って真似をすること。それが本物へつながるという深い考えがありました。

本物というのは、あくまで本物の洋服のことではなく、自分自身の内面のこと。
そして、内面を磨くという言葉を何度言うよりも、実際に行動として示すことができるかどうか。
それを控え目に、しかし、確固たる信念を持ってできる人のことを本物と呼ぶのでしょう。
これからも本物を知る旅は続いていきます。

それではまた次回・・・

本物のアイテムを
紹介していただきました

セミナーラのジャケット

フランコ・ミヌッチ氏に直接オーダーした一品。ヴィンテージ調の生地は光の具合で色味を変え、様々な表情を見せてくれます。

セミナーラのジャケット

ROTAのパンツ

ROTAのパンツ

ジャケットと同じタイミングでオーダーされたROTAのパンツ。オーソドックスなグレーで、ジャケットとのバランスがとれた裾幅が広めのシルエットが特徴的です。

サクラ柄のプリントタイ(ドーメル・ジャポン)

LOOM NIPPON主催の植樹祭で関係者に配られたネクタイは、ドーメル社のもので、鮮やかなサクラ柄のプリントが施されています。

サクラ柄のプリントタイ(ドーメル・ジャポン)

一般社団法人 LOOM NIPPON PRアドバイザー 竹内好文氏

PROFILE

竹内好文氏。
一般社団法人 LOOM NIPPON PRアドバイザー。
広告会社に勤めるかたわら、南三陸町の復興支援の手伝いをする団体
LOOM NIPPONのPRアドバイザーを務めている。

<受賞歴>
●第46回JAAA懸賞論文で作品「ブロックチェーンが、『愛される広告』の『扉』を開く『鍵』となる」が金賞受賞
●第48回JAAA懸賞論文で作品「《「欲望」の仕掛け人》から《「連帯」の仕掛け人》へ」が銀賞受賞

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