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Vol.01修羅場を潜り勝つことでしか本物にはなれない

第1回はMr.feniceのオーナー鎌田一生氏へのインタビュー。修羅場をくぐった経験を通してでてくる言葉・・・
それはまさに重みのある本物の大人の話です。

2019/02/15
Vol.01 修羅場を潜り勝つことでしか本物にはなれない

トレンドを追うよりもスタイルのある装いを

今回お話を伺ったのは、Mr.feniceのオーナー 鎌田一生氏。
鎌田氏は32歳で自身の会社を設立し、順調に業績を伸ばしたものの、トレンドを追いかけて事業を拡大するスタイルにストレスを感じ、会社を閉鎖。
1年後ビジネスに徹するため、レディース分野に進出するが、2年で事業に失敗。東京での成功から一転、すべてを手放し失意のなか北海道に戻る。
しかし、そこで終わることなく、ベーシックでスタイルのある装いへの強い想いから再び東京へ進出するという波乱に満ちた経験を持った方。
今では、Mr.feniceのオーナーとして多忙な日々を送る鎌田氏に本物とは一体何かを伺いました。

嫉妬したくないという想いから今のサロンを

再び東京に進出してくるにあたり、嫉妬したくないという思いが強く、それが今のサロンになったとのこと。
その理由を「20代の頃はアルマーニやバルバスの世界観に対する憧れもあったが、53歳でサロンを開くなら周りと比べて一喜一憂したり、嫉妬はしたくない。
20代ならまだしも、いい大人が周りと比べて嫉妬するのはカッコ悪い。だから嫉妬しないような自分の店が一番カッコいいと想える店がやりたかった。
ずっと嫉妬し続けてきたからこそ、自分が最高と想える店を立ち上げたかったし、サロン作りにあたり、大事にしていたのは<マイナー志向結果メジャー>という考え。洋服はマイナー志向で始まる方が格好いいと思っていたから、それも今の形を生むきっかけになった。」と表現。
嫉妬しないお店=本当に自分自身が最高と想える商品だけがおいてあるお店。逆に言えばご自身が着たくない服は、世間的に売れ筋でもトレンドでも置かない。マイナーでも一切関係ない。そんな狭い世界でビジネスを立ち上げる鎌田氏の信念こそが、Mr.feniceというサロンの形だけではなく、エレガントだが、異端児的であり、クラシックなサロンなのに、音楽で例えるとクラシックでもポップスでも無い、どこか「ロック」な独特の雰囲気を醸し出している要因なのかもしれません。

嫉妬したくないお店を開き、「50歳を過ぎてトレンドっていう言葉も嫌になり、流行を追うのが嫌というよりも、何よりもまずは自分が着たい服、いいと思った服だけをMr.feniceで表現したい」とおっしゃる鎌田氏。しかし、当たり前のように雑誌やSNSでは毎シーズンごとのトレンドや旬なブランドの情報が目に付きます。では、それについては、どのように考えているのでしょうか?

旬なブランドを追うのではなく、
出会いに任せるし、なければ作る

「旬なブランドに興味がないわけではないんですが、旬かどうかではなく知らないブランドとは出会いに任せる。出会いを大事にしてその時に出会ったらそれは運命。しかも無理に運命を感じるのではなく、しっくりこなければ、Mr.feniceのオリジナルとして作ればいいと思っている。」
常にアンテナは張りながらも、周りからの情報ではなく、いつでもご自身の判断軸を大切にし、自然体で出会いに任せている姿勢は、大人の余裕を感じずにはいられません。

旬なブランドを追うのではなく、出会いに任せるし、なければ作る

迷うこと自体が格好悪い

周りがどうかではなく、自分がどう思うか、それをファッションだけではなく、買い付けなどサロンビジネスにも徹底して反映している鎌田氏。
常に、どの場面でも、周りではなく自分という想いの中には、強さを感じます。
「あれも欲しいけどこれも欲しいと迷ってしまうのは、20代・30代ならまだしも・・・いい歳した大人がそうだとカッコ悪い。スタイルが無いから目立とうとかすごいだろうという気持ちで買う。しかし二度と着ない。それは自分のスタイルがないから。いい大人なんだから、自分のライフスタイルの中でこれで充分でしょと思えるところはないと。」
確かにSNSなどを通して様々な情報を目にすると、衝動的に欲しくなってしまうもの。
しかし、そのように思ってしまうということは、結局は服ありきで自分を見せようとしているだけ。
本物の大人、それは服のスタイルの前に、自分というスタイルがなくてはならない。
だからこそ、多くを語らずともその人にスタイルを感じるのだと思います。

ファッションだけではなく、自分自身のスタイルを確立していくことが本物の大人への入り口。そう思っている私に「ただし、自分のスタイルを確立したとしても、そこで止まっていては意味がなく、自分のスタイルを貫きながらも少しずつ進化していくことが大切」と話していただきました。

ブレずに常に進歩する

「100人にいたら95人は嫌いだけど、5人はかっこいいって言ってくれればそれでもいい。だからといってそこで止まっていたら、だめ。少しずつでも進化をしていく・・・自分のスタイルがブレることがないようにしながら。ものづくりも自分自身も同じ、常に100%の出来栄えというのはないから進化しなければ意味がない」
その言葉を聞いたとき、果たして、私は「ブレずに」できてきただろうか?

ブレずに常に進歩する

そう自分に問いかけると、今までは周りの情報ばかりが気になり、ブレてしまっていた自分を痛切に感じます。
あくまでファッションは自分のスタイルがあってのこと。そして、自分のスタイルを常にブラさずに進歩すること。
ファッションにおける本物の大人というテーマで伺いはじめたものの、それは本質的ではなく、見た目だけの話なのかもしれません。

クラシックは止まってない。止まらない。

それでは、ブレずに進化するということを、ご自身のMr.feniceではどのように表現しているのでしょうか?
「トレンドも進化して...と言うこととは、また違うんです。5年前に作ったジャケットは着れないですというのは悲しい。5年前のものも当然今でも着れますが、今年の方がここ改善したから良くなった。しかし、これはこれでいいなと言える。 もしかすると、あと5年経ったらあの時の作ったジャケット、意外と今いいよねとなる可能性もある。着れないっていうことにならないのが僕らとしては1番大事ですよね。」
確かに、おっしゃるように、昔のジャケットを着ていらっしゃるときも、決して古いなどの印象はなく、常にらしさが漂うスタイルが印象的です。
(私が着用している本サイトTOPページの赤いジャケットも、実は、初期のMrfeniceのジャケット)
買ったあと、何年経っても全く違和感なく、つい袖を通したくなるのは、作り手としての信念があるからこそ。
意識的に気がつくことはないかもしれないが、確実に相手に伝わっている想いがあるのだと感じます。

ブレずに進化していくこと、はじめに伺った嫉妬したくないという想い、それらが全ては一つの線でつながっていると感じるのは、
鎌田氏の強い信念があるからこそで、深い話も非常にシンプルに感じます。自分自身のスタイルを通して、いいと思ったものが格好いいのであって、周りは関係ない。それはビジネス全般に対する考え方にも全く同じ。まさにブレない信念がありました。

納得するレベルまでいけないのは
格好悪い

「例えばたくさん稼いで自分が思い描く生活を送るという話をすること自体が憚られるような風潮があります。もちろん、私もまだまだだと思っていますが、自分が納得できるレベルまで行けないのは格好悪いと思う」という表現は、まさにご自身の考えそのもの。
シンプルで且つ確固たる信念がすべての判断軸になる。それはファッションでもビジネスでも同じであり、難しく考えることなく、自分自身に問いかけみる、それこそが自分自身のスタイルを作る第一歩なのかもしれません。

納得するレベルまでいけないのは格好悪い

最終的にはその人の魅力。
修羅場を潜って勝つことしか本物にはなれない

優しい表情と言葉の中にも、常に一貫した強い信念がある鎌田氏。最後に本物とは何かを伺いました。
「私自身、まだ人生の途中ですが、振り返ってみて、ファッション業界で、ときには地べたを這ってきて良かったと思うし、それもあって少しは洋服が似合うようになったかなと思えてきた。要するに洋服が似合う似合わないという話もそうですが、最終的にはその人に魅力があるかが大切。本物だからこそ、人間的な魅力があり、本物であれば服は似合う。そして、そうなるためには、修羅場を潜るしかないというのが最終的な結論。これを言ったら全部おしまいかもしれないけど、普遍的な普通の服を着ていても魅力がある本物の大人になるには、修羅場を潜るしかないでしょう」
ご自身も東京での成功・挫折という人生の修羅場を経験されているからこその重い言葉でした。

ファッションにおける本物の大人というテーマで伺いはじめたものの、それは本質的ではなく、見た目だけの話なのかもしれません。
本質的な部分、すなわち、「自分自身」が本物でなければ、何を身にまとったとしても本物にはなれない。私は、鎌田氏の話を聞いてそう思いました。
そして、始まったばかりのこの旅は、私の中でかけがえのない財産になる予感がしています。
本物を知る旅、それは自分自身を振り返り、成長していく旅になることでしょう。

それではまた次回・・・

本物のアイテムを
紹介していただきました

エルメスダッフルコート

1990年代のエルメスのダッフルコート。
20年近く前のコートだけあり多少の経年劣化はあるものの、サイズ直しを行い、長年愛用されている一品。

エルメスダッフルコート

MARINIのUチップシューズ

MARINIのUチップシューズ

100年以上続く歴史を持つMARINIのUチップ。
シンプルでベーシックな佇まいの中に、オーラを感じる普遍的で本物と呼べるアイテム。ラマ革を使用した最高の履き心地も多くのファンを魅了してやまない理由でもある。

キャップ

キメすぎない外しのアイテムとして使用頻度が高いというキャップ。コートの中にニットを着込み、そこにこのキャップを合わせるコーディネートは、いつものコーディネートを一段とこなれた印象にしてくれます。

キャップ

鎌田一生

PROFILE

Mr.feniceオーナー 鎌田一生氏。
20代でメンズ紳士服專門店に入り、アパレル会社を経験、32歳で自身の会社を立ち上げる。ファッションとcafeをミックスした独自路線の店舗を開き、順調に業績を伸ばしたが、その会社を閉鎖。別会社を立ち上げレディース分野に進出するも2年で事業に失敗し、一旦札幌に戻る。数年後、再び東京に進出し、「俺はもう死なない」というその時の思いを込め、不死鳥を意味するMr.Feniceをスタート。
自身のブランド、Mr.feniceを初め、ROTA、AttoVannucci、Sartoria Alessandro Guerra、MARINI、鎌田氏にとってのヒーロー福澤幸雄氏に想いを馳せて生まれた車好きのブレスレットブランドVolante等、クラッシックな大人のワードローブを取り扱う。その落ち着いた店内には、有名人も足繁く通うほどである。

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